エンタメ考察

るろうに剣心の感想と考察

2020年4月25日

『るろうに剣心』は1994年から1999年に週刊少年ジャンプで連載されていた人気マンガ。

ストーリーは、幕末に人を殺しまくった侍(=人斬り抜刀斎)が新時代の明治に入ってから罪を償うというものです。

るろうに剣心は歴史マンガやバトルマンガの部類に入ります。

しかし、一般にバトルマンガではキャラの心情はあまり描かれないものですが、本作は贖罪がテーマだけに個々の心理も丁寧に描かれています。

さらに少年ジャンプは人気マンガの連載を引き伸ばす傾向にありますが、本作は人気があった割に露骨な引き伸ばしはなくテンポよく進んでいきます。

また、ドラゴンボールやワンピースといったバトルマンガは強さがインフレしているため矛盾がかなりありますが、本作ではインフレはほとんど見られません。

まあ弥彦はお子様で竹刀剣士の割に強すぎると思うが。

このように、

  • フィクションとノンフィクションをまたにかけたストーリー
  • 濃厚な心理描写
  • テンポのいい展開
  • インフレのなさ

が本作の魅力だといえます。

るろうに剣心の感想と考察

ここから先はネタバレ的な内容も含んでいます。

一般に少年漫画は、人に暴力をふるうシーンがあったとしてもひどく暗い雰囲気にしないのが普通。

ワンピースは基本的にはにぎやかですし、ナルトとHUNTER×HUNTER とドラゴンボールは主人公が明るいです。

しかし、るろうに剣心は主人公もストーリーもちょっと暗いです。

それもそのはず、幕末の動乱で生き方を大きく揺さぶられた人たちが本作の主要人物だからです。

具体的には以下のようになります。

  • 剣心親を切り殺された孤児で、自身も幕末に人を殺しまくった呵責から不殺の精神で罪を償う
  • 門下生が離れた道場を立て直す
  • 左之助汚名を着せてきた政府に反発しながら生きる
  • 弥彦孤児でスリとして働いていたが神谷道場でやり直す
  • 蒼紫隠密御庭番衆の名誉のために戦う
  • 斎藤「悪・即・斬」のために生きる
  • 志々雄自身の欲望と明治政府への恨みから国盗りに出る
  • 宗次郎虐待されたうえに志々雄に洗脳されて精神がおかしくなる
  • 姉を殺された恨みから復讐鬼になる

他に、比留間兄弟、刃衛、般若、高荷恵、津南、三島栄次、由美、安慈、八ツ目なども出自あるいは生き様が暗いです。

明るさに満ちているのは、操、伊織、赤べこの妙くらいでしょうか。

ついでにいうとOVAの追憶編と星霜編も暗いです。追憶編は幕末の惨殺シーンから始まりますし、星霜編は全体的に病的なまでに暗い雰囲気に満ちています。あれは深夜でも地上波では放送できないでしょう。

とくに星霜編の最後は、おそらく若くして病死したということでしょうから、まあバッドエンドでしょう。

しかし、そのときになって剣心の十字傷が消えたのだとすれば(死んだから剣心は許された)、剣心は死なない限り罪を償えなかったといえます。

剣心の症状はどう見ても重度の梅毒です。重度の梅毒だとすると、あの時代では治りません。ちなみに今はある程度治るとのこと。

これほどまでに暗い少年漫画は有名どころでは北斗の拳くらいしか思い浮かびません。

でも、暗いことがすべて悪いわけではなく本作の場合は暗さが立派な魅力になっています。

そこには新時代を前向きに生きようとする意志も感じます。

本作のキャラは出自が暗いだけに、新時代(将来)を前向きに生きようとする精神は逆に目立つのです。

弥彦、由太郎、恵、右喜、宗次郎などはそんな感じです。

原作の世界観は追憶編にあり?

ただ、原作の本来の世界観は追憶編に近いんでしょうけど、地上波のアニメ(しかもゴールデンでの放送)は暗さを忠実に再現したがらないもの。

そのため、主題歌を歌っていたジュディマリと川本真琴が半ば強引に明るく仕立てていたような気がします。

人誅編がOVAにまわされたのは視聴率の問題ではなく、暗さの問題が大きいでしょう。

原作の人誅編で、”天誅!天誅!天誅!天誅!天誅!天天天天天天天天天天天天天天天、誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅誅”という煽りとともに剣心が人を斬りまくっていたシーンは衝撃的だった。

あれを地上波で放送するのは無理があります。

ただ、私は時代物にもリアリティがある方がよいと考えますので、幕末をリアルに描写するとあのような形になるのは仕方ないと思っています。

技の魅力

本作は技もかっこよさで満ちています。

今思うとちょっとダサいとしても、若くて多感な時期だと惚れたりしますよね。もちろん、その筆頭は飛天御剣流です。

まず「一子相伝の古流剣術・飛天御剣流」という字面と設定がまずかっこいいと思いませんか。

一子相伝という要素はまるで『北斗の拳』のよう。

飛天御剣流の技についても、跳躍力を武器にして相手を仕留めるなど魅力的な設定になっています。

奥義伝授における九頭龍閃と天翔龍閃のちょっと強引な理屈も好きでした。

すなわち「九頭龍閃は防ぎきれない技だから、やられないようにするためには先に切り込むしかない。それが超神速の抜刀術である奥義・天翔龍閃」というものです。

なお、師匠である比古清十郎いわく飛天御剣流の理念は「時代の苦難から人々を守ること」。

ただ、人々を守るというにしては「陸の黒船」と呼べるほどに強力ですから使い手には自制心が求められるでしょう。

その意味では比古清十郎みたいな他人に無関心なタイプが飛天御剣流の使い手に向いている。

逆に志々雄みたいな征服欲の強い人間が身につけたら危険極まりないわけです。

まあ志々雄の場合はどんな剣術でもマスターしてしまいそうなので、存在そのものが危険ともいえますが。

一方、剣心は14歳という若さ(未熟さ)で飛天御剣流を手にしてしまったために真っすぐに行動してしまい、取り返しのつかない傷を自分にも他人にも負わせてしまったのでした。

子どもは技をマネしたがる

さて連載当時、二重の極みや牙突についてはマネした子どもがかなりいるはずです。

私の知り合いなどテニスラケットで牙突をマネしていました。

二重の極みや牙突に限らず、いつの時代も小中学生は人気マンガの技をマネしたがるものです。

一昔前では、北斗百裂拳、パロスペシャル、キン肉バスター、かめはめ波、アバンストラッシュ、霊丸といった具合です。

それらのマンガが連載している時代を小中学生として過ごした人は、かならずといっていいほどいずれかの技をマネしたのではないでしょうか。

とくに牙突は零式から参式まで備えるなど少年の心をくすぐるものです。

この時代のエンタメ作品は、零、壱、弐…という形で数字を表したがった(=大字)。エヴァンゲリオンやFF7の魔晄炉がまさにそう。

回天剣舞六連、火産霊神、瞬天殺、虎伏絶刀勢など漢字だらけの技名もインパクトがありました。

このように漢字だらけの字面を押してくる姿勢は、その少し前の少年ジャンプを支えた北斗の拳と幽遊白書に通じるものがあります。

ただ、素手の左之助が真剣の弥彦を相手にしたらまず勝てないと思うのは私だけでしょうか。

好きなキャラ

さて、るろうに剣心で私の好きなキャラは斎藤一と比古清十郎です。

「犬はエサで飼える、人は金で飼える、だが壬生の狼を飼うことは何人にも出来ん」

セリフの引用文献

和月伸宏『るろうに剣心 巻之七』集英社、1995年

とくに斎藤の上のようなセリフにはしびれました。

また斎藤は、大久保利通が亡くなったときに「(大久保という大きな人材を失ったがゆえに)これから日本の迷走が始まる」という名セリフを口にしました。

のちに日本がアメリカに戦争を仕掛けて負けたことを迷走と呼ぶなら、これもまたノンフィクションと融合しています。

あとは宇水を心眼と牙突零式でぼこぼこにしたシーンが印象に残っています。

薫人形と剣心の廃人ぶりは批判されるべきか

さて本作でよく批判される薫人形ですが、その前に人形作りを示唆する伏線的な描写がいくつも出ていましたから、私は別によいと思っています。

もし和月氏が行き当たりばったりで薫を生きていたことにしたら嫌ですが、伏線を示していた以上、よく考えてあのようなシナリオにしたのは明白です。

ただ、薫が縁に殺されなかったのは縁は姉と同い年くらいの女性には拒否反応を起こすからだとされましたが、これは無理があります。

それなら薫にマスクでもつけて若い女性だとわからないようにすればいくらでも殺せるからです。

あと、薫が死んだと見せかけられた後の剣心の茫然自失ぶりを批判する声もありますが、あれはリアルな(自然な)描写だと思います。

確かに剣心はとんでもなく鬼畜な人斬りでしたが、彼なりに世直しを志すなどよくも悪くも一本気な人間でした。

時代背景としても幕末は剣心自身も野盗に親を殺されたように大変な混乱期でした。

そういう時代だと精神を正常に保てなくなってもおかしくありません。

そして不殺を誓ってからは贖罪の道にまっしぐらとなりました。

その贖罪の道すらも縁には否定されましたから、それまで頑張ってきた反動として廃人になるのは致し方ないように思います。

うつ病になりやすいのは真面目で責任感が強い人が多いように、剣心はよい方にも悪いにも突っ走る素直な性格だったため廃人になったのでしょう。

残念なところ

本作には残念な点もあります。その筆頭は人誅編の縁の同志です。

すなわち、鯨波兵庫と戌亥番神と乙和瓢湖と八ツ目無名異と呉黒星と四星の9人です。

京都編の十本刀は敵でありながらも同情を引く要素をもっていたり、志々雄の配下になった動機が重かったりと目を引く面もありました。

しかし、縁の同志と呉黒星と四星に関してはかなり薄っぺらいです。

剣心と戦おうとした動機はもちろん、実力も大したことがないですし、デザインもそんなに好きではありません。

ただ外印だけは特別で、代々続く外法の人形使いという設定は嫌いではありません。

それに本作は美形が多いですが、外印の素顔は珍しく「アレ」だったので強く印象に残っています。

まとめ

るろうに剣心は残念な点もありますが、全体としては十分に魅力的な作品だと思います。

ギャグ的な要素としても、剣心の字の下手さ、雷十太のヘタレぶり、操の怪鳥蹴り、師匠のナルシストぶり、トリvsホウキ、斎藤の嫁などは面白いです。

また、さほど長くないので動画を通じて休日などに一気に見てしまうのもよいでしょう。

とくにU-NEXTは、コミック(電子書籍)、TVアニメ、OVA、実写映画が豊富に揃っているのでオススメです。

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